三体シリーズ

中国発のSFにして、世界中で人気を集めているシリーズ。

『三体』

『三体Ⅱ 黒暗森林』上・下

『三体Ⅲ 死神永生』上・下

とシリーズ合計で5冊の書籍が出ており、大きな時間軸と広い世界が展開されていく。

以前イスラエルのSF作品集である『シオンズ・フィクション』の際にも触れたが、海外発のSFというのは少し理解が難しい部分がある。今回でも最序盤は中国の歴史的な出来事から始まるため、とっつきづらさを感じる人もいるのではないかと思う。

『シオンズ・フィクション』
イスラエルのSF作品を集めた一冊。 作品名や表紙などを見るとよく言われるSF小説作品の中でもそれぞれつくられた国ごとに特色があるらしい。 今は『三体』が話題にな…
selector-for.com

だが、そこからの展開は息もつかせぬスピード感と臨場感で進むため、ぜひ全て読んでみてほしいシリーズ。

『三体』より「カウントダウン」
「カウントダウン」
作品序盤に物理研究者の頭上に現れる数字はデジタル数字を想像したが、
作品内ではそういう表記でなかったり、そもそもデジタル数字であるという考えは地球人しか行き着かないだろう。

『三体』の魅力は「時間の経過」と「論理的思考」である。

作中の登場人物を移り変わらせ、大きく時間を経過させることで
世界自体がどうなっていくかに興味を持ちやすくなっている。
人の一生の短さ、儚さも同時に感じることができ、人間的ではなく、宇宙的な視点で地球や人間のことを考えられるようになるだろう。

『三体』より「水滴」
「水滴」
時間経過によって、贈り物に見えたり破壊の化身に見えたりと、
美しすぎるものはその時の感情によって様々な捉え方ができてしまう。

そしてもう1つの魅力は解決策が論理的思考に寄っていることだと思う。
SF小説と聞くと最新技術や今はまだ開発できていない兵器など、様々な解決策が想像できるが、
作中では論理的な考え方でコミュニケーションを図り、問題を解決に導くことが印象に残る。

論理的な考えを軸にした交渉で宇宙文明と渡り合う様はとても説得力があり、
理解しやすいため、確かな満足感が得られるだろう。

そしてシリーズはその5冊で完結するが、作中の空白期間を補うシーンなどを描いた、

『THE REDEMPTION OF TIME』

という作品も存在する。

『THE REDEMPTION OF TIME』。作者は宝樹(BAOSHU)

これは作者の宝樹(BAOSHU)が『三体』を読み終えたのちに
その興奮冷めやらないうちに描いたファン作品であるが、
のちに『三体』作者の劉慈欣が公認としたものである。

初めて手に取るSF作品としても読みやすい部類に入るため、様々な人におすすめできる一冊。
それだけの広がりを見せる『三体』は体感してみてはいかがだろうか。