時間のかかる彫刻

『時間のかかる彫刻』は長らく入手困難な状況が続いていたようだが、
SFカーニバル2022の機会で復刊。
目に触れる機会を増やすことになった。

「SFカーニバル」は、代官山 蔦屋書店が開催する、日本SF大賞の贈賞式をはじめとした、SFイベントです。SFを愛する人のドキドキも、SFを知らない人のワクワクも…
store.tsite.jp


元々『スタージョンは健在なり』という題名だったが、改題され今のかたちに。
著者であるシオドア・スタージョンは

「常に絶対的にそうであるものは、存在しない」(”Nothing is always absolutely so.”)
→SFの90%はクズである
→そしてあらゆるものの90%はクズである
という格言でも有名だが、

1940年代〜のアメリカで作品を残した作家である。
(この1冊は1970年代に描かれた)

この本は不思議な形の愛や生き方との向き合い方について描かれた短編集となっており、
スッキリとした読後感というよりはゆっくりと考えさせられるような作品ばかりとなっている。
その奇妙な感覚はスタージョンという単語がチョウザメの意味から「キャビアの味」とも言われている。
シオドア・スタージョンは生涯に5回結婚し7人の子どもをもうけているそうだが、その人生観が奇妙な人間関係や愛の描写に生かされているのかもしれない。


ここまで人が死にながらどういう心理を辿っていくのかを感じさせられる
「自殺」、
ありきたりだからこそ改めて人間の生き方の選択肢を勘がさせてくれる
「ジョーイの面倒を見て」
「人の心が見抜けた女」
が特にお気に入りになった。


気分が向いた時に少しずつ読みたいと思える短編が多く、
ぜひ一度手に取りお気に入りの話を見つけてほしい。