異常【アノマリー】

フランスのSFジャンル小説でありつつも、社会実験・思考実験的な要素もある作品。

冒頭で登場人物の紹介があり、
その後の出自分の重複者(ダブル)が現れる出来事から物語が大きく展開していく。

人間は自分と同じ存在に出会った時にどういう判断を下すのか、
社会はこの出来事に対してどういう判断を下すのか、物語の中で考えることができる。

また、この物語ではまさに異常な出来事についての明確な回答は示されておらず、
そのことが思考実験的な要素を強めていると言える。


人間は自分と似た存在、同じ存在を本能的に排除しようとする生き物なのでは?と思う。
(物語の中では異なる考えで行動する者ももちろん存在していた)
自分の居場所、自分のアイデンティティを守るために防衛本能が働く生き物なのではと。

出来事についての明確な回答がないため、
人は信じるモノを求め、宗教はその答えを求められる関係性も日本では宗教の考えが浸透していないので新鮮でもあった。

人間の上位概念を認めざるを得ないのか、神の御技で納得できるモノなのか…
これが人間の上位概念の仕業であれば、先進的な研究に意味を持てなくなる点も興味深い。


自分がこの出来事に出くわした時にどう対応できる?
という考えを持ちながら楽しめる一冊。